沃川旅行記
ソウル駅を9時10分に出て釜山へ向かう京釜線ムグンファ列車に乗って沃川(옥천:Okcheon)に行きました。ムグンファ号列車は今は韓国で一番遅い列車(各駅停車)になっています。今から行く沃川駅はKTX(高速鉄道)はもちろん快速のセマウル号列車も停まらない小さい駅です。旅行の前にインターネットでチケットを予約し、家のプリンターでチケットを印刷してソウル駅の改札口でそのまま利用できました。ソウル駅の改札口には駅員さんも立っていなかったし、列車の中ではチケットの検査もしませんでした。
各駅停車の列車に乗るので沃川駅までは約1時間40分くらいかかります。列車に乗る前にソウル駅の広場で一腹していたら、ホームレスの人が小銭ちょうだいと言いながら物乞いをしてきました。断ると消えた後に悪口言うからと脅されました。が、私にも意地があるのできっぱりと断りました。予告の通りに後ろから悪口をさんざんぶっ掛けられながら駅舎に戻りました。この日朝の9時からあんな汚い悪口をされたのは、韓国で私しかいないかもしれません。
7月8日、梅雨の影響で天気は気まぐれ、幸いにも今日は晴れ時々曇りです。ソウルを通り抜けてからは景色が緑色に変わって来ました。車窓越しに見える景色がグリーン一色に変わって30分くらい経った時、外の景色を見ながらモーニングコーヒーでも飲もうかと思い食堂車両に行きました。食堂車両のことを韓国語では食堂車(식당차)と言いますが、コーヒーが3000ウォンなのに缶ビールは割りと安くて1800ウォンでした。サンドイッチや弁当も販売してはいるようですが、この時は準備中で、バナナ牛乳と買って窓に向かって座りました。各駅停車の列車なので外の景色がゆっくりと過ぎて行くので旅行している実感が湧いて来るし、グリーンのパノラマは大都会の色とは違って目がすごく癒されている感じもしました。食堂車両を離れて席に戻る時気がついたのですが、最近の列車はインターネットやカラオケもできるんですね。
沃川駅
沃川駅に11時30分くらいに到着しました。降りる乗客も2,3人くらいしかいない小さな駅です。駅の事務所の人に沃川の観光地を聞いたら、観光地図をくれ、説明もしてくれました。でもここ沃川は観光名所があるほど大きな町ではありません。駅前の広場には沃川で生まれた詩人鄭芝溶の詩碑が立っていました。詩碑の上には彼の故郷(고향)という詩が刻まれています。今回ここ沃川を旅行先に入れた理由も鄭芝溶文学館と彼の生家に行くためでしたが、駅から降りてすぐ彼の詩碑が迎えてくれたので、私の訪問を歓迎してくれる気がして嬉しく感じました。
鄭芝溶
鄭芝溶詩碑に刻まれた詩「故郷」は、
故郷に、故郷に帰って来ても
懐かしく思っていたあの故郷ではなく
・・・(中略)・・・
故郷に、故郷に帰って来ても
懐かしく思っていた空だけが青くて高い
日本留学(同志社大学)から帰国して、ソウルのある高校の教師をしていた1932年に作られたそうで、最初の一句を読んだだけで国を失われたことを故郷に例えて詠んだことが分かりますね。
沃川駅正面の道を道なりに歩いて行くと、この町の中心部であろう所に小さい橋があり、また彼の詩「海」が書かれていて、橋から少し歩いて沃川聖堂に上がる壁には彼の詩「郷愁」と彼のキャラクターが画かれています。
沃川聖堂
沃川聖堂(옥천성당)に上がる道は急な階段があり、階段を登ると沃川の町が一望できる綺麗な沃川聖堂が建っていました。沃川地域に天主教が伝来されたのは1880年頃、パリ外方宣教会(Paris foreign missions society)のA.P.Robert神父が宣教を始めてからだそうで、聖堂は1906年に建てられ今は近代文化遺産として登録されていると案内板に書いてあります。
鄭芝溶文学館
沃川聖堂からさらに20分くらい田舎の街並みを見ながら、道なりに歩いていたら鄭芝溶文学館(정지용문학관)という標識が見えて来ました。いよいよ沃川旅行の目的地が見えて来ました。続きは鄭芝溶文学館のページを見てください。
春秋民俗館
鄭芝溶生家から徒歩1分くらい離れた交差点の角に、1856年に建てられた伝統家屋を宿泊、レストランとして営業している春秋民俗館(춘추민속관)です。魚そばを食べないでここでチヂミに地酒かお茶を飲んだ方がよかったなと後で思いました。食事するつもりはなかったので中には入らなかったですが、建物や庭がとても綺麗でした。
電話:043-733-4007。毎週水曜日は休み。営業(朝11時~夜9時)。チヂミ(6000W)。地酒(13.5%、8000W)。
春秋民俗館のある交差点のことを旧邑交差点(구읍사거리)と言いますが、ここから次の旅行先である報恩行きのバスがあると聞いたので、地元の人にバス停がどこか聞きました。ここから報恩(보은)へのバスは一日に7回しかないようですが、バス停の日陰で2~30分待っていたらバスが来ました。報恩までは山の道を40分ほど走りますが、途中で湖畔を走ったり峠を越えたりして景色も綺麗で、なにせ乗客も少なく一日に7回しか運行しない田舎のバスだから疲れも感じずにアッという間に報恩に到着しました。